勘違いや無知により相続で思わぬ不幸を背負い込む

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妻と子供二人という一般的な家族構成であったとしても、それぞれの家族には、それこそ家族の数だけ異なる事情があるものです。

子供に恵まれなかった夫婦、同居はしているが正式に婚姻届を出していない男女、夫に先立たれ義父の面倒を見てきた嫁というように、その家族にしかわからない物語があるものです。

内縁の妻の相続権

最近、シングルマザーという言葉をよく耳にしますが、これは夫に先立たれた子供のいる女性というより、あえて交際相手の男性とは結婚せず、その人の子供を一人で育てる女性のことを指すように感じられます。

また、婚姻届を出さずに同居している男女を内縁関係にあるといいますが、このシングルマザーや内縁関係にある男女については、こと相続に関しては極めて弱い立場にあります。

結論としては、わが国の法律はこのような立場の人たちと、正式な婚姻関係のある男女を明確に区別し、法律上の婚姻関係がない者同士の互いの相続権を認めていません。

つまり、内縁関係にあり同居して寝食を共にしていたとしても、男性側が死亡したとした場合、女性には一切の相続権が認められないことになります。

そのような制度である以上、正式な婚姻が不可能なのであれば、女性側はできるだけ男性名義の預貯金や不動産は持たず、時間をかけて自分名義にしていくしか、自分を守る方法はありません。

亡夫の父の面倒をみた嫁

夫がすでに亡くなったにもかかわらず、実家には戻らず亡夫の両親の面倒を見続ける嫁の場合、義理の父が亡くなった時にはそれ相応の相続権があってもおかしくはないと思いますが、残念ながら法律はこの場合にも非情です。

子供が親より先に亡くなるというケースもまれにありますが、こと相続に関しては、義父と嫁の間で養子縁組をしておくか、遺言書を義父に書いておいてもらうしか救われる途はありません。

通常とは異なる家族構成や複雑な家庭環境である場合、必ず相続において問題が生じるものです。養子縁組や遺言書の作成を、このようなケースには必ず検討してみる必要があります。

婿養子と思っていたら

子供がすべて女性という家族は珍しくありません。その子供たちが結婚して夫の籍に入ると、実家の苗字は絶えてしまいます。

そこで、娘の一人に婿養子をとることもあるでしょう。夫婦別姓を論じられる時代に婿養子というのもナンセンスのようにみえますが、苗字が絶えるということは、両親にとっては切実な問題なのです。

多くの場合は夫の苗字を妻が名乗るので、妻の苗字を夫が名乗ことを婿養子と思いがちですが、婿養子とは、単に妻の両親と夫が養子縁組をすることを言います。

妻の苗字を名乗ったからといって、その夫が義父の財産を相続できることにはなりません。つまり、義父と養子縁組をすることで初めて婿養子となり相続権を得ます。

勘違いしたまま時が流れ、義父が亡くなって初めて相続権がないことに気づくというようなことがないよう、婿養子になるときに専門家と相談しておくことで、後悔することもなくなるのです。

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