分割の話し合いスタート
どんな財産があるのか、どう配分するのか。第三者に見えもらおうか。
質問
家族と相続財産の配分についての話し合いをしなければならないと思いますが、切掛けがつかめません。どうすればいいでしょうか。
回答
できることなら避けて通りたい話題です。しかしながら、放ったらかしにすると、後々問題がより複雑になり、決してご家族のためにならないことのほうが多いのです。
そこで、相続財産の中でも、分割の緊急性が求められる金融機関の預貯金について、まず検討に入るのがいいでしょう。
預貯金は一旦口座が閉鎖されると、外部からの入金も引き出しもできなくなります。特に定期的な入金がある場合には、早急に対処するべきです。
金融機関に預けられた預貯金を引き出すには、金融機関指定書式の遺産分割協議書を金融機関に提出しなければなりません。
この場合、誰がどの口座からいくら相続するかということは未定であることが多いようですが、この手続きを通じて、他の財産も相続人に配分しなければと皆さんが考えるようになります。
相続財産の全容が分かるようになれば、一度リストアップしてみて、相続人の皆さんで共有することから始めればいいでしょう。
ポイント
たいていの場合、金融機関に預けられた預貯金などの配分方法は、金融機関に対し、相続人の代表(例えばお母さん)に一旦名義を変更し、後の正式な分割時に改めて各人に配分するという手順を取ればいいのです。
ただし、不動産の場合には、一旦相続人の代表に名義にかえると登記に要するコストや相続税上の問題点が生じることがあり、正式に相続人が決まるまでは登記するべきではありません。
身内だけで財産のたな卸しをすると、疑心暗鬼が生じる場合があります。専門家は第三者として活躍してくれます。
配分できない相続未登記物件
おじいちゃんの名義のままになっている土地どうするの
質問
父が保有していた不動産の登記を見ると、祖父が所有者のままになっていました。このような場合、父の相続人である私たち家族の名義にするにはどうすればいいのでしょうか。
回答
不動産が先代の相続の時に、その相続人に分割されずに放置されているケースが数多く見受けられます。理由として考えられるのは、親族間で話がまとまらなかったであるとか、面倒なので放置していたというようなことが考えられます。
中には、今となっては20数人が相続人として生存し、改めて全員から相続手続きのための書類を入手しなければならないというようなケースも出てきます。
相続での配分という問題を先送りした結果、修復が不可能な事態にならないよう、相続が生じたあと必ず遺産の分割手続きと登記を完了するべきなのです。
ポイント
相続登記がされていない間も、不動産の固定資産税の納税義務は引き継がれています。また、今後空家になることで、固定資産税が跳ね上がることも想定されるため、早期の遺産の分割により、いつでも売却できる環境だけは整えておくべきでしょう。
時間とコストは掛かっても、将来の親族増加を考えると、相続登記を始めるチャンスです。
親族関係が複雑だった
再婚や生き別れ、相続を何とか円滑にしたい
質問
私の父は再婚し、先妻との間に子供が一人います。父の遺産の配分について気をつけることはありますか。
回答
親族関係が複雑な場合、後のトラブルを考え遺言書を残されているケースがあります。公正証書か私製かどちらかになるのですが、一度書類整理の段階で探してみてください。
遺言書が見当たらない場合、義兄弟にも実子と同じ割合の相続権がありますので、財産配分から排除することはできず、一旦相続財産についての遺産分割協議書案を作成し、ご本人に提示することになります。
ただ、気をつけなければならないのは、各相続人が持つ遺留分を侵害したような分割案では、その方の納得が得られないことがあります。この遺留分、民法で定められた相続人が最低限相続できる財産のことをいい、遺言でも排除できません。
お父さんが何らかの手続きをとっている可能性がありますので、書類の整理をした上で、義兄弟と早めに連絡を取ることをお薦めします。
ポイント
時間が経てば経つほど問題が複雑化する可能性がありますので、お父さんのご葬儀へのお誘いから始めてみるべきです。
直系の子はどんな事情があろうと実子です。できたら遺言ではっきり石を伝えてくれていたら。
相続人の確定作業
相続手続きに必要な書類を全部自分で集めるというのは至難の業です。
質問
私たちには子供がいなかったので、夫の死亡で夫の兄弟も相続権が生まれるということですが、中には死亡している兄弟もおり誰が相続人になるかさっぱり見当がつきません。
どうすればいいのでしょうか。
回答
ご主人のご兄弟が死亡されていても、その方のお子さんが相続人となります。
これを代襲相続というのですが、兄弟が多い場合や、養子に出られた方がいるような場合、誰がご主人の正式な相続人であるかを決めるのは大変な作業となります。
相続手続きの中でも、この作業は専門家に任せた方がいいい作業で、せっかく戸籍謄本を揃えたとしても、相続手続きに不足するものがあると、何度も役所とのやりとりをしなければなりません。
ここは餅は餅屋ということで進めたほうがいいでしょう。
ポイント
相続人を戸籍謄本で確定させないと、遺産分割協議自体ができなくなります。
相続手続きの入口の作業ですから、専門家に任せましょう。
手間、労力とかかる時間を考えれば、コストはかかっても専門家に依頼したほうが安心確実です。
私製遺言の検認、公正証書遺言の執行
正式に使える遺言書と使えないもの。結局意思が伝わらず、やはり話し合いということも。
質問
父の遺品を整理していたら遺言書らしき書類が出てきました。どのように処理すればいいのでしょうか。
回答
お父さんが自分で書いたものを私製遺言というのですが、正式な封がされていようでしたら、家庭裁判所で検認という手続きを受けなければなりません。
次に、公正証書遺言の場合には、そのような検認の手続きは必要なく、遺言執行人が公正証書遺言に書かれた通りに遺産の配分をすればいいのです。
金融機関の預貯金の配分、不動産の名義変更など、遺言書があればそれに沿って、財産の配分がスムーズに進みます。
ポイント
遺言の内容が特定の相続人に偏って配分されるようなケースでは、相続人から遺留分に ついての主張がされる場合があります。
あまりに偏っているようであれば、全員の合意のもと、遺言書を無視し、改めて遺産分割協議をするということも可能です。
私製の遺言書が出てきたら開封作業は家庭裁判所で、公正証書遺言は誰でも謄本が取れるもので、検認作業などありません。
遺留分に対する手当
兄弟間もお金の問題はトラブルの元、できるだけ早い段階で情報の共有を
質問
私の兄は、父の生前住宅購入に際して多額の資金提供を受けたようです。それなのに、父が残した財産の配分は、法定の相続割合通りに行なわなければならないのでしょうか。
回答
遺産の配分は、相続人同士の話し合いで決められますが、それぞれの相続人が自己主張することも自由です。
遺言書がある場合にく起こるのですが、過去に多額の資金をお子さんに贈与している場合に、遺言書ではそれに言及せず、残った財産だけで配分するような書き方がされている場合です。
ご自身の法定相続割合 の半分までの遺留分の主張ができるのですが、過去にお父さんから多額の贈与がされている場合、その贈与されたものは、一旦相続財産に加えて遺留分を計算することになっています。
遺言書がない場合には、遺産分割の話し合いの中で、過去に贈与されたものも含めて、遺産分割するよう主張することは可能です。
ポイント
このような展開に発展すると、財産配分に要する時間が長引くことがあります。
遺産分割協議において過去の贈与されたものの情報を早い目に共有し、不信感を産まない対応が必要です。
如何に相続財産と過去に贈与した財産を明らかにするか、それぞれの利害が絡むだけに難しい。でも、それがすべての出発点です。
所在のわからない相続人がいる
子供全員が親との行き来をしているわけではありません。人生それぞれです。
質問
私の兄弟に、十数年前から行方がわからない者がいます。母がなくなり、残された遺産の配分を始めたのですが、行方不明者に対してどのような配分をすればいいのでしょうか。
回答
相続の手続きの中で、遅々とし作業が進まないケースが、この相続人の行方不明の場合です。
特に問題は、行方不明者がいるばかりに、遺産分割協議が進まず、特に相続税の申告期限から3年すると、配偶者軽減や小規模宅地の減額のような特例が永久に受けられなくなるというデメリットを蒙るのです。
遺言書を作成しているのならこのような問題は起こることが少ないのですが、多くの事例では、相続が発生してから相続人と連絡を取り始めるため、スムーズな相続手続とはならないのです。
また、ご家族の中には行方不明者がいることは分かっていても、その理由を知られたくないようなケースもあり、無駄な時間が徒過するのです。
そこで、行方不明者に代わって「不在者財産管理人」を家庭裁判所で選定することで、取りあえず相続財産の配分を終了することはできます。
ポイント
相続税では、遺産分割協議書が整わないと受けられない税の特例があります。自宅の評価額を低くすることと配偶者にかかる相続税を大幅削減する特典です。
これは絶対に受けたい特典ですから、遺産分割協議はまとめたいものです。
後を継ぐ子供がいない
子供がいないと亡くなった方の兄弟にも財産が配分される
質問
私たち夫婦には子供がいません。夫が亡くなったのですが、夫の親族に特別な配慮が必要でしょうか。
回答
相続財産を残すご夫婦に子供がいない場合、相続財産は妻に4分の3、夫の兄弟に4分の1となります。
奥様としては、少数とはいえ夫と自分で作った財産が兄弟に配分され、奥様の老後の生活に支障が来ることに納得感がないでしょう。
子供のいない相続の場合、公正証書遺言で奥様に100%相続させる遺言を作成しておくことが必要なのですが、残念ながらご主人がそれをしなかったということであれば、遺産分割の話し合いで、苦しん状況をご説明して、相続の放棄をしていただくよう説得するしか方法はありません。
ポイント
亡くなった方の兄弟には、民法で保証されている遺留分という相続財産に対する権利がありません。
したがって、兄弟を相続財産の配分から排除するには、遺言書の作成が不可欠だったのですが、残念ながらお御主人がそれをされなかったのですから、分割協議を円満にすすめるしか方法はないのです。
子供がいない場合になぜに兄弟に相続権があるのやら。ましてや甥姪まで登場することもあります。