■取引価格は高く評価は低く
相続税に備えるために、以前から採用されている方法に、不動産の有効活用があります。これは、手持ちの現金または金融機関から借り入れた資金で、自己所有の更地の上に貸家を建てるというものです。
仮に、100坪の土地上に、床面積200坪の賃貸マンションを1億5千万円で建築したとします。
この場合、相続税におけるこの賃貸マンションの評価額は、おおむね建築費の半分以下となる場合がほとんどです。
つまり、1億5千万円の現金で建てた建物が、7千万円程度の評価しかされず、施主は8千万円程度の含み損を抱えることになります。
これは、相続税上の財産評価に関する一種の割り切りで、現金で相続すれば1億5千万円に対して相続税が課されることになるのに対し、賃貸マンションなら、7千万円程度まで評価が落ちることとなり、相続税の納税額も大幅に引き下げられる結果となります。
したがって、相続税上は同じ購入額のものであっても、資産によって評価方法が異なるため、当初予想していたより、大幅に相続税額が少なくなるケースが出てきます。
そのため、相続財産の構成の見直しが可能であれば、早い時期に行うべきなのです。
ただし、賃貸マンションは一度建ててしまうと、入居者の減少や家賃の下落、金利の上昇、さらには管理コストの上昇など、相続税の減額効果を上回るリスクを負担することがあるので注意が必要です。
■値上がり前の贈与
このデフレ下で、値上がりするものを探すのが困難なように思われますが、金やプラチナはデフレ下でもこの10年間で2倍以上に値上がりしています。
また、長期的には株や不動産も、高業績銘柄や希少価値のあるものは値上がりする傾向は続いています。
相続税の準備のためには、この値上がりする財産をどの時点で相続人に引き継ぐかということを考える必要があります。
これからも値上がりしていくことが読める財産があるなら、早い段階で相続人に贈与または、売却するという選択も視野に入れるべきです。
そうすることで、今後の値上がり益に対する相続税負担を少しでも緩和することが可能となるのです。
つまり、相続税は相続が発生するまでに準備をすることで、納税額が大きく変動する税です。
それゆえ、現在保有する財産の内容を精査し、将来の相続に備えることで、相続人に過度な負荷をかけずに済ませてあげたいものです。
■納税資金の確保
相続財産のほとんどが不動産という方の場合、相続税の現金納付が困難なケースが出てきます。
中には、相続税額を含めて、相続人に金銭的に負担をかけないように、預貯金や生命保険での納付が可能なように、財産構成を考えた相続を見かける場合があります。
相続税をピタリと納められるように準備するのは、私たちのような専門家にも技術的になかなか難しいのですが、財産の残し方を見ると、その人の相続人への思いやりを感じられることがあるのです。
財産を貰って迷惑するということが、相続税ではしばしば起こるため、預貯金と生命保険で納税資金を確保するためのアドバイスは貴重なのです。