あげたつもりが自分のもの
そもそも相続税は、人が亡くなった時に、その人が生涯をかけて作りあげてきた財産を相続人が譲り受けるなら、それに対して課税しましょうという税金です。 今回の改正で、一般家庭でも相続財産が5000万円程度あれば、相続税が課されることとなるため、早目にお父さんから財産を貰っておこうという人が出てくるかもしれません。 そこで、生前にお金や財産を譲ることで相続財産が減る、従って、相続税が減るというのは不公平であるため、そういう人に対しては贈与税という税金が課されることとなります。 この贈与税、現行では、1人110万円という基礎控除をした後で、年間1000万円超の贈与には50%の税率が適用されます。 要は、多額の贈与をした場合に、その半分は納税するということになっているのです。つまり、贈与税は相続税の代わりに財産の移転に目を光らす税であるといえるのです。
子供名義のお父さんの貯金
そこで、一度に多額の資金を子供に譲ると贈与税がかかるというなら、毎年少しずつ、110万円の範囲で贈与すれば10年間で1100万円のお金に相続税がかからずに贈与できる、と考える人が出てきます。 もちろんこの方法は、相続税対策の王道ではあるのですが、相続人が亡くなった時に残された、せっかく子供名義で貯金してきたものでも、お父さんの相続財産であるとして相続税の対象になるケースが出てきます。 間違いのポイントは、子供名義の貯金であっても、その貯金通帳と印鑑をお父さんがずっと預かっていて、一度も子供が引き出した形跡がないということなのです。 贈与は、基礎控除である110万円以内で毎年贈与したものは、将来相続税が課税されることはありませんが、それはあくまで本当に相続人から贈与した場合です。 もし、お父さんが本当に毎年子供に貯金をプレゼントしているのなら、貯金通帳と印鑑は子供の手元にあるはず。 しかし、普通は子供が無駄使いするからと、お父さんの手元に置いておき、子供が使えない状態になっているのです。 贈与が贈与にならないとなると、お父さんが子供名義で作った貯金は、実はお父さんのものではないのか、と疑われることになってしまうのです。
しっかり足跡を残す
そこで、将来、その貯金が子供のものであるということを主張できるように、毎年お父さんから子供にお金を譲るたびに、贈与したという書面を作り、贈与の確たる証拠を残すことです。 子供や孫が未成年であれば、その親権者が親権者としてその書類に押印することです。 また、さらに重要なのは、実際に子供の名義の貯金であることを立証するために、その貯金から子供が、自分の学費や生命保険の掛け金を支出して、子供が使ったという実績を残すことなのです。 贈与は、贈る側だけの意思表示だけでは成立しません。確かに貰ったという足跡を、貯金通帳の中に出金というかたちで残す必要があるのです。