海外に出れば相続はどうなる

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最近は、日本人が海外で暮らすケースも珍しくなくなってきました。それにつれて、海外に個人の財産がある場合やご両親が海外に居住していて亡くなり、相続が発生するということも起こっています。

ところで、わが国の民法では「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」わけですから、相続人にとっては、被相続人(亡くなった方のことです)が海外に住んでいる場合や財産が海外にある場合に、その相続手続をどうすればいいのか、途方にくれてしまうのです。

老後を海外で

年金を財源として、海外で老後を過ごそうとする人が増えています。日本国内にある全財産を現金化して海外に移動するケースもあろうかと思いますが、被相続人が海外に長期ステイしたとしても、その人と相続人との親族関係が断ち切られるわけではありません。

したがって、海外で過ごすご両親がなくなった場合、何らかの相続手続が必要になることは間違いありません。

特に、海外で保有する被相続人の銀行口座の相続手続については、現地のローカルールに従わなければならず、相続税の有無はともかく、現地の専門家に相続手続を依頼しても、相当の時間が必要になることは覚悟しなければなりません。

したがって、日本国内に相続人がいる場合には、確実に相続人に相続財産がいきわたるように、現地のルールに従った遺言書を残しておいてあげる心配りが欲しいものです。

被相続人は、相続人が日本にいながら、現地とやり取りをする苦労まで相続してしまうことを避けてあげなければなりません。

なお、海外居住者の国内にある財産に対する相続税上の取り扱いについては、号を改めて解説したいと思います。

世界に羽ばたく相続人

日本企業のグローバル化で、企業に勤める人が海外赴任することも珍しくはありません。大企業ばかりではなく、大企業の生産拠点の海外移転に伴って中堅・中小企業も海外に進出するケースが多くなってきました。

そうすると、財産を相続したお子さんが、海外に居住していることもあり、日本国内にある相続財産についての相続手続も煩雑になります。

そもそも、海外に居住するお子さんが単なる海外出張でなければ、住民票は日本にはありません。

各種の相続手続を行う場合に、わが国では、印鑑証明書が必要になりますが、海外に居住していると、それを入手することはできません。そこで、代替手続が必要になります。

まず、海外居住者の場合には、実印というものが登録されていませんので、相続人が海外に居住したまま相続手続を行うのであれば、現地の日本領事館に証明を受けたい遺産分割協議書などの書類を持参して、サイン証明を入手することになります。

また、相続人が一時帰国している場合には、日本の公証人役場に行き、同じく公証人からサイン証明をもらうことになります。

いずれにしても、相続人が海外にいる場合には、相続手続の段取りを計画的におこなわないと、手間ばかりが発生してしまうことになります。

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