小さな子供同士が、玩具を取り合うということがあります。
こんな時、お母さんの「こら!」という一喝で、兄弟げんかは、さらなる展開を見せる場合と、終息に向かう場合があるものです。いずれにしろ、兄弟の仲を取り持つお母さんの存在は大切です。
しかし、両親が亡くなり、兄弟の間のいさかいを仲裁する存在がいなくなると、子供同士のけんかは、なかなか終息に向かいません。
■遺産分割協議をまとめる
相続人が、被相続人から遺産を引き継ぐ時、どのように配分するかを被相続人が遺言書で決めてくれていれば、遺産の配分で揉めることは少なくなります。
ただ、ご両親など被相続人が、事前に遺産の配分を決めているケースが少ないのが現実で、配分の方法を相続人にゆだねてしまうことのほうが多いのです。
これは、遺言書の書き方が分からないということもありますが、両親からすれば兄弟は仲良く遺産を分割してくれるであろうという思いがあるからでしょう。
実務的には、遺産の配分について遺言書で指定がされていない場合には、相続人同士が話し合って決めるしかありません。
特に、金融機関の預貯金や不動産の登記の場合には、相続人全員の合意を表す書類がなければ、被相続人から相続人へ名義変更ができないため、どんなことがあっても話し合いをまとめなければなりません。
この相続財産の配分についての合意事項をまとめた書類を遺産分割協議書といい、その作成は相続手続きの中でも最も骨の折れる作業なのです。
一つしかない玩具を取り合っても両親がいれば何とか喧嘩を終息させることができます。
しかし、相続の場合にはその両親がいないなかでの話し合いであるわけですから、時として何年も遺産分割ができないようなケースも出てくるのです。
■遺産分割しやすくする
遺産分割を難しくする原因に、被相続人の意思がはっきりしないということがありますが、これは遺言や被相続人の過去の言動や書き置いたメモなどから、ある程度は読み取ることができます。
しかし、遺産分割を難しくしているのはむしろ相続人で、過去に被相続人から受けた経済的な利益に大きな差があったり、被相続人の生活に対する支援状況なども異なることが挙げられます。
さらに、残された財産が自宅と少しばかりの預金ということになると、兄弟仲良く分けようにも、簡単にはいきません。玩具が一つしかない中での兄弟と同じこととなるのです。
簡単には分割できない自宅のような財産が、兄弟共有になっているケースを見受けます。おそらく兄弟間で分割の話し合いがつかなかったか、争いを恐れて共有にした可能性があります。
しかし、兄弟がいつまでも相続した自宅に住み続けることは稀で、共有にしたことによる問題点は、後々噴出してくることになります。
分割しやすい金融資産を手当てするか、将来売却して資金化しやすい財産にしておいてあげることが大切です。
子供同士が揉めていいのだと思う親はいないと思いますが、相続を通じてその種をまいてしまうこともあるのです。