平成27年は年間の死亡者が130万人を超えたそうです。また、10年後の2025年には、死亡者は150万人を超え、2040年に団塊の世代が平均寿命に達するまで増加する一方です。
このことは人口減少という社会問題に直結することになりますが、一方これから20年近くは、相続というマーケットが拡大し続けるということにもなります。
また、出生数は今後さらに減少し続け、親や祖父母から財産を譲り受ける相続人の数は減少する一方となり、相続人一人あたりに相続される財産額は、増加していくことになるはずです。
このようなマーケットの変化は、金融や不動産という財産関連のビジネスに対しても大きな影響を与えることとなります。
■相続税対策を知る
新聞紙上でよく見かける広告に、不動産を購入して相続税対策というのがあります。
これは、更地(さらち)を相続すると何の相続税上の特例も受けられず、ストレートに相続税の対象となるため、賃貸建物を借金をして建築し、相続税を減額しようというものです。
そもそも賃貸建物の相続税上の評価は建築価格の40%位にしかなりません。
つまり、3000万円で建築しても財産評価としては、1200万円程度にしかならず、施主は相続税上、1800万円の含み損を抱えることとなります。
また、賃貸建物を更地に建てると、その土地は更地評価ではなく、その20%前後が評価減されることとなります。
つまり、建物で含み損を抱え、土地の評価減で、賃貸建物の施主は、相続税の財産評価で大損をすることとなり、結果として相続税が安くなるという理屈です。
バブルのころは、土地自体が高騰し、相続税も巨額な時期があり、それなりの効果が都心部ではありました。
■リスクを伴う対策
しかしながら、賃貸建物を建てた人の殆どが知らされていなかったことがあります。それは、空室問題、金利上昇、建物の修繕費に対する将来のリスクです。
事実、わたくしのお客様の中でも、相続税はゼロになったものの、多額の借金を抱え、返済不能に陥った方がおられます。
賃貸建物経営も事業であるため、本来、素人の方が手を出せるものではないはずですが、広告上手の企業に踊らされてしまう方が後を絶ちません。
賃貸建物経営をするのであれば、まず土地は買わない、自分の更地に建てるのであれば、最低入居率70%、家賃の値下がり無し、金利5%、修繕費は建築費の20%から30%を想定し、30年程度で元金が完済できる計画なら検討してもかまいません。
しかし、都心の一部を除き、この条件で確実に収支が合う賃貸建物経営は難しいのが現実です。
30年後に完済できたころにまた、立て直すぐらいの修繕費がかからないとも限りません。
すなわち、借金無しの自己資金で賃貸建物経営というリスクに耐えられる方以外は、賃貸建物経営はお勧めできません。
少しばかりの相続税の減少より、将来の事業リスクを抱える必要はないのです。